便秘

便秘には大腸癌などの重篤な疾患が潜んでいます。便秘でお悩みの方は当院へご相談ください。

便秘とは

便秘とは本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態をいいます。一般的には週2回以上の排便のない状態が1か月以上続くこととの定義もありますが、排便習慣は個人差が大きく、便秘は一概に排便回数のみで定義されるものではなく、排便回数が少なくとも身体的症状が伴わなければ必ずしも便秘症にはなりません。

原因

便秘の原因には、腸管に何らかの狭窄がある器質性便秘と、それ以外の機能性便秘に分けられます。さらに他疾患による症候性便秘や薬剤による便秘もあります。

器質性便秘:突然の排便障害とともに、腹部膨満感、腹痛、嘔気・嘔吐などが生じる場合に疑われます。腸管に基礎疾患が存在することで起こり、重篤かつ緊急を要することもあります。原因としては大腸癌などの腫瘍性病変、腸閉塞、Crohn病に伴う狭窄、周辺臓器の癌などによる腸管の圧迫も原因となります。

機能性便秘:慢性の便秘で、消化管検査で器質的異常がないものを機能性便秘といいます。弛緩性便秘、痙攣性便秘、直腸性便秘に分けられます。

弛緩性便秘:弛緩性便秘では、大腸筋層の機能低下が生じ、蠕動運動が障害され、大腸が弛緩し、糞便が大腸内に長時間とどまります。水分が過剰に吸収され、便が硬くなり、排便困難が生じます。食物繊維の摂取量の減少が関与していると考えられています。

②痙攣性便秘:痙攣性便秘は自律神経を介した大腸の緊張亢進により腸管の痙攣性収縮が起こり、特にS状結腸で痙攣性収縮が持続すると直腸までの糞便の輸送が妨げられ便秘となります。この病態には過敏性腸症候群の便秘型が含まれると考えられます。

③直腸性便秘:便が大腸を刺激して大蠕動が生じると、便は直腸に侵入し直腸壁を刺激し排便反射が誘発されます。しかし直腸内に便が到達しても排便反射が弱く、便意を伴わないことによる便秘が直腸性便秘です。主な成因は、日常生活の中で仕事などのために習慣的に便意を我慢、無視し続けることにあると考えられており、習慣性便秘とも呼ばれます。

症候性便秘:症候性便秘は内分泌疾患、膠原病、神経疾患などの基礎疾患が存在し、それが原因で便秘が生じることを言います。代表疾患として糖尿病、強皮症、甲状腺機能低下症、パーキンソン病などがあります。

薬剤性便秘:向精神薬、抗うつ薬などの抗コリン作用を有する薬物や、下剤の乱用などが挙げられます。

診断

当院では便秘症状の初診患者様に対して、病歴や身体診察を行った後、必要に応じて、腹部単純レントゲン検査、腹部CT検査(提携医療機関)、大腸内視鏡検査、採血検査を行います。最も重要なのは、腸閉塞大腸癌などの器質的異常を除外することです。

治療

器質性便秘:原因となる基礎疾患に対する治療が優先されます。便秘を来すほどの大腸癌であれば、進行していることも多く、速やかに高度医療機関へ紹介させていただきます。

機能性便秘:慢性便秘の多くは機能性便秘です。成因に生活習慣とのかかわりが強く推定され、食生活を含めた生活様式の改善がまず試されます。薬物療法は補助的治療としてなされます。

弛緩性便秘:成因の一つとして大腸内容物の容量減少に伴う大腸進展への長期にわたる刺激減弱が指摘されています。食物繊維は大腸内容物のボリュームを増加させるため、毎日20-30gの食物繊維を摂取することを指導します。また十分な水分の摂取、運動を指導します。生活指導でも十分な効果が得られない場合、薬物療法を開始します。当院での治療の第一選択は塩類下剤(酸化マグネシウム)ですが、不十分な場合はルビプロストン(商品名:アミティーザ)、エロビキシバット水和物(商品名:グーフィス)などの新薬、少量の刺激性下剤を使用します。

痙攣性便秘:日常生活のストレスが原因とされており、日常生活の誘因からの離脱が基本となりますが、困難な場合は薬物療法が併用されます。抗コリン薬、向精神薬、塩類下剤、ルビプロストン(アミティーザ)、リナクロチド(リンゼス)などを使用します。刺激性下剤は腹痛などの症状を悪化させるため原則使用しません。

直腸性便秘:直腸性便秘は排便に対する抑制・無視が病態の基盤にあることから、日常生活の見直しが必要です。規則正しい食生活、生活リズム、そのうえでの排便習慣の確立が治療の基本となります。一時的に排便反射を誘発する座薬、浣腸が用いられます。

症候性便秘:基礎疾患の治療が基本となりますが、病態に応じて機能性便秘に準じた薬物療法が併用されます。

薬物性便秘:基本的には弛緩性便秘に準じた治療が行われます。