過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)はストレスが原因で、慢性的に下痢や便秘、腹痛を繰り返す疾患です。文明国に多くみられ、日本人の7人に1人がこの疾患に当てはまります。30代より若い年代に多い疾患です。良性疾患ではありますが、生活の質を障害することから、適切な治療やケアが必要です。
試験や会議の前、通勤・通学の途中で、急におなかが痛くなって、トイレに駆け込む… こんな症状がおありの方は、過敏性腸症候群かもしれません。まずは当院へご相談ください。
原因
原因は不明ですが、中枢機能と消化管機能の関連(脳腸相関)が関係しており、消化管運動の異常、消化管知覚過敏、不安や抑うつなどの心理的異常を認めます。
診断・検査
まずは器質的疾患を除外した後、RomeIIIの基準に当てはまれば過敏性腸症候群と診断されます。IBSは以下の4つに分類されます。
1.便秘型IBS(IBS-C):硬便または兎糞状便が25%以上あり,軟便(泥状便)または水様便が 25%未満のもの
2.下痢型IBS(IBS-D):軟便(泥状便)または水様便が25%以上あり,硬便または兎糞状便が 25%未満のもの
3.混合型IBS(IBS-M):硬便または兎糞状便が25%以上あり,軟便(泥状便)または水様便も 25%以上のもの
4.分類不能型IBS:便性状異常の基準がIBS-C,D,Mのいずれも満たさないもの
RomeIIIの基準:過去3ヵ月間,月に3日以上にわたって腹痛や腹部 不快感が繰り返し起こり,次の項目の2つ以上が ある
1.排便によって症状が軽減する
2.発症時に排便頻度の変化がある
3.発症時に便形状(外観)の変化がある
ただし6ヵ月以上前から症状があり,最近3ヵ月間は 上記の基準を満たしていること。
当院では過敏性腸症候群と診断する前に、上下部の消化管内視鏡検査を行います。また必要に応じて採血検査、培養検査、CT検査を行い、腹痛や下痢、便秘を来す器質的異常をきちんと除外します。悪性腫瘍と炎症性腸疾患を除外することが重要です。
治療
まず食事療法や運動療法による生活習慣の改善を行います。ストレスが多い方は、ストレスを避ける生活を指導します。しかし十分な効果が得られない場合は、薬物療法の開始します。
薬物療法:
下痢型IBSではセロトニン(5‐HT3)受容体拮抗薬のラチセトロン(商品名:イリボー)、高分子重合体(商品名:ポリプルなど)、消化管運動薬(商品名:セレキノンなど)、乳酸菌製剤(商品名:ビオフェルミンなど)、抗コリン薬(トランコロン、ブスコパンなど)、止痢剤を使用します。便秘型では緩下剤(酸化マグネシウム、商品名:アミティーザ)、リナクロチド(商品名:リンゼス)などが処方されます。