はじめに
腹痛でクリニックを受診される方は非常に多いですが、我々消化器専門医でも診断が難しい症状の一つです。腹痛の中には、すぐに対処しなければ死に至る疾患が数多くある一方、ストレスなどの生理的要因で起こる場合もあります。当院はクリニックであり、迅速生化学検査やCT検査は完備していませんが、可能な限り確定診断に努めています。しかしながら緊急性の高い腹痛と判断され、速やかな腹部CT検査、専門的治療が必要とされる場合は、提携医療機関へご紹介させていただきます。
腹痛の原因と分類
緊急度による分類:
緊急性の高い腹痛(緊急搬送もしくは速やかな病院受診が必要):消化管穿孔、腹膜炎、急性虫垂炎、急性胆嚢炎、急性胆管炎、急性膵炎、腸閉塞、ヘルニア嵌頓、上腸間膜動脈閉塞症、出血を伴う胃十二指腸潰瘍、急性心筋梗塞、大動脈解離、大動脈破裂、子宮外妊娠、卵巣茎捻転、糖尿病ケトアシドーシス
準緊急(軽症であれば翌日の病院受診もしくは外来治療が可能): 胆石症、大腸憩室炎、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、尿路結石、腎盂腎炎、胃アニサキス症、出血を伴わない胃十二指腸潰瘍、悪性腫瘍など
クリニックで対応可能: 感染性腸炎、過敏性腸症候群、軽度の胃十二指腸潰瘍、慢性膵炎、潰瘍性大腸炎、機能性胃腸症、心身症など
部位による分類:
診断
詳細な問診と身体診察を行うことでおおよその検討がつく場合があります。随伴症状を伴っているかどうかも重要です。例えば嘔吐や水様下痢を伴った腹痛であれば、感染性腸炎と診断されます。みぞおちから右下腹部に移動する腹痛で、右下腹部に圧痛点を認めれば虫垂炎が強く疑われます。発熱、黄疸、腹痛、いわゆるCharcot3徴を認めれば、急性胆管炎が疑われます。消化管穿孔や腹膜炎の場合は、腹部全体が硬くなり、反跳痛を認めます。腸閉塞であれば、排便や排ガスがなく、腹部が膨満してきます。詳しくは各疾患の項を参照してください。
問診や身体診察の後、必要に応じて血算生化学検査、尿検査、心電図、レントゲン検査、腹部超音波検査、内視鏡検査などを行います。上記の検査で診断がつかない場合は、提携医療機関にて腹部CT検査を行います。
治療
基本的には原因に応じた治療が選択されますが、対症療法として鎮痛剤、鎮痙剤を処方する場合があります。