ピロリ菌

ピロリ菌とは

ピロリ菌(正式名称:ヘリコバクター・ピロリ)は胃の粘膜に生息しているらせん状の細菌です。1982年にオーストラリアのワレンとマーシャルという医師が発見しました。その後の研究で、ピロリ菌が胃炎や胃潰瘍、胃癌などのさまざまな病気にかかわっていることが明らかになりました。

感染経路

感染経路はまだはっきりとは解明されていませんが、口を介した感染(経口感染)が大部分と考えられています。上下水道が十分に普及していなかった世代の感染率が高いですが、若い世代の感染率は低くなっています。

 

ピロリ菌はどんな病気を起こすのか

ピロリ菌が胃の粘膜に感染すると炎症が起こります。感染が長く続くと、胃粘膜の感染部位が次第に広がり、慢性胃炎となります。この慢性胃炎が胃潰瘍や十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎を引き起こし、その一部は癌に進展します。

我が国の調査では10年間で胃癌になった人の割合が、ピロリ菌に感染していない人では0%だったのに対し、ピロリ菌に感染している人では2.9%だったと報告されています(Uemura N, et al.:N Engl J Med. 2001;345(11):784-9)。

除菌療法について

ピロリ菌の感染によりさまざま病気を引き起こすことから、日本ヘリコバクター学会のガイドラインでは、すべての感染者に除菌療法が勧められています。保険適応で除菌療法の対象となるのは、ピロリ菌に感染している人のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎の患者さん、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の患者さん、胃MALTリンパ腫の患者さん、特発性血小板減少性紫斑病の患者さん、早期胃癌内視鏡治療後の患者さんです。

検査:まずはヘリコバクター・ピロリ感染症が疑われる患者さんのうち、

①内視鏡検査、または造影検査で胃潰瘍または十二指腸潰瘍と診断された患者さん

②内視鏡検査で胃炎と診断された患者さん

③胃MALTリンパ腫の患者さん

④特発性血小板減少性紫斑病の患者さん

⑤早期胃癌の内視鏡的治療後の患者さん

①~⑤のいずれかに該当する場合、ピロリ菌の検査を行います。

検査の方法は内視鏡を使用する①迅速ウレアーゼ検査、②検鏡法、③培養法 と内視鏡を使用しない④抗体測定、②尿素呼気試験、③便中抗原測定があります。

治療:上記の検査でピロリ菌がいる場合、一次除菌療法(2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を1週間)を行います。内服終了後1か月以上あけて、ピロリ菌が消失したかどうかの検査を行います。一次除菌の成功率は75%程度です。除菌できなかった場合、二次除菌療法(抗生物質のうち一剤を初回とは別の薬にします)を行います。二次除菌まで行えば、ほとんどの場合除菌が成功すると報告されています。

健診でピロリ菌感染が疑われた方

健診でB群、C群、D群に該当する方は、一度内視鏡検査を受けられるよう推奨されます。当院ではまず内視鏡検査を行った後、適応のある方に除菌療法を施行させていただきます。

 

参考文献:

1.「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」の適応が追加 - 厚生労働省」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/file.jsp?id=146639&name=2r9852000002wkg5_2.pdf )を加工して作成

2. Uemura N, et al.:N Engl J Med. 2001;345(11):784-9

3.認定NPO法人 日本胃がん予知・診断・治療研究機構2016