川崎病

川崎病とは

川崎病(KD)は3歳以下の乳幼児(ピークは1歳頃)に見られる原因不明の疾患で、5日以上続く発熱、発疹、目の充血、苺舌などを特徴とします。年間約10,000から12,000人に発症し、近年増加傾向です。問題となるのは、その一部で冠動脈瘤、心筋梗塞などの重篤な心合併症を来すためです。

川崎病のうち、標準治療である初回IVIG(超大量ガンマグロブリン(2g/kg/回)静注療法)を受けるのは約86%、不応例(難治性川崎病;rKD)は、全国川崎病調査結果から、初回投与群の20%とされます。よって年間約1700~2000人がいわゆる難治性川崎病となります。川崎病は年間約10,000から12,000人の小児に発症し、その内約16%で、IVIGに不応、いわゆる難治例となります。このIVIG不応KDの約25%に冠動脈拡大・瘤(CAL)が合併します。IVIG不応KDは難治で、その治療法は、標準化されておらず、世界的に病院、医師の間で混乱しているのが現状です。この初回IVIG不応KDを難治性KD (refractory KD:rKD)と定義します。2005年にインフリキシマブ(IFX)のrKDへの有効性が発表されてから、国内のrKD治療はさらに混乱しました。

原因

川崎病自体の原因については、Epstein-Barrウイルス、ブドウ球菌を発端とするスーパー抗原、グラム陰性菌由来のエンドトキン(LPS)などの単因子説や、個人的素因(遺伝子素因としてITPKC遺伝子が提案されている)と惹起物質の総合関係からの考察もあります。直近では腸内の複数の細菌の関与も提唱されていますが川崎病の原因は不明です。なぜ動脈瘤ができるのか、なぜ一部でIVIGが効かないのかも不明です。

症状・診断

川崎病の主要症状は、①5日以上続く発熱、②両側眼球の充血、③口唇口腔発赤・充血・苺舌、④体幹不定型発疹、⑤掌蹠紅班と硬性浮腫、⑥非化膿性頸部リンパ節腫脹です。このうち5つを満たせば川崎病と診断されます。rKDでは、初回のIVIG後24時間以内に解熱せず、全身状態も悪化します。抗生物質は効きません。

当院では発熱で来院されたお子さんに対して、川崎病の可能性も念頭に置きながら診療を行っております。疑われた場合は速やかに専門医療機関へご紹介させていただきます。

合併症

rKDの約25%に冠動脈拡大・瘤(CAL)を合併します。CALの一部は巨大冠動脈瘤(径>8mm)となります。巨大冠動脈瘤の頻度は、IVIGが導入されてからも減少はしていません。CALが成人期に冠イベントを起こすか否かはまで不明ですが、動脈硬化を起こしやすくするだろうと予想されています。また、30歳前後で突然に発症した冠イベントの症例では、冠動脈拡大・瘤が見られる時があり、小児期に川崎病になっていた可能性が考えられています。rKD で合併したCALは後遺症として残存し、一生涯、アスピリン、ワーファリンなどの抗凝固療法の継続が必要であるとともに、巨大冠動脈瘤では運動・生活制限が必要となります。

治療

rKDの治療として試みられているのは、IVIG再投与(合計4g/kg)、ステロイド、インフリキシマブ、シクロスポリン、ウリナスタチンです。

 

参考文献:難病情報センターホームページ(www.nanbyou.or.jp/entry/2565)(2018年1月現在)から一部引用、改変