花粉症

花粉症とは

花粉症は、花粉によって生じるアレルギー疾患の総称であり、主にアレルギー 性鼻炎とアレルギー性結膜炎が生じます。 花粉が鼻に入ると、直後にくしゃみ、鼻汁が生じ、少し遅れてから鼻づまりの「即時相反応」が生じま す。このときの鼻の粘膜は、かぜに近い赤い色の粘膜の腫脹を起こします。 このため、初めて花粉症になったときには、検査をしなければ、かぜと間 違う場合もあります。 目に花粉が入ると早くから目がかゆくなり、涙が流れ、目が充血してき ます。症状が強いときは、鼻で吸収されなかったスギの抗原成分が鼻から 喉へ流れ、喉のかゆみ、咳を生じます。また鼻づまりによる頭痛、鼻や喉 の炎症反応による微熱、だるさなどの症状に悩まされます。 家の中にいるときなど、花粉がない状態でも症状はありますが、多くは 花粉の繰り返しの吸入による鼻づまりの症状が主体です。これをアレルギー反応の「遅発相反応」と呼び、アレルギーの細胞から放出 されるロイコトリエンなどの物質が神経や血管を刺激するために症状が現 れます。鼻の粘膜の知覚神経が刺激されるとくしゃみが起こり、その反射で鼻汁が出ます。鼻づまりは、血管の拡張と血管からの水分の放出により 鼻が腫れるために起こり、目のかゆみはヒスタミンなどが神経を刺激する ために起こります。厚生労働省の調査では国民の約25%が罹患していると考えられています。ちなみに院長自身も花粉症を患っています。

原因

関東地方では、2月から4月はスギ花粉、4月から5月はヒノキ花粉、6月から8月はカモガヤなどのイネ科花粉、8月から10月はブタクサやヨモギなどの雑草類の花粉が主として飛散します。その中でも最も多いのがスギで、花粉症の約70%はスギ花粉症です。スギ花粉の飛散量は年によって大きく変動しますが、近年、戦後に植えられたスギの木が大きく成長し、潜在的な花粉生産能力が高い状態になっています。また、気象の温暖化の影響で花粉は多く産生されるようになっているとも言われています。スギ花粉飛散を減少させる方策として、花粉の多い木の抜き伐りや花粉の少ないスギへの品種改良の取り組みが行われています。

診断

花粉症の診断の多くは、花粉飛散時の典型症状の有無と、血液中にある花粉に対する抗体の存在で診断されます。花粉症は季節的にも風邪の流行する時期に重なります。このため、発症の初期ではくしゃみ、鼻水が症状として同じことがあります。また急に悪化した他の鼻疾患たとえば慢性副鼻腔炎(蓄膿症)などとの鑑別が必要になります。

治療

花粉症の治療には、医療機関で行う薬物療法、手術治療、減感作療法があります。しかし、治療を行うことと平行して、自らが花粉の暴露から身を守ることが前提となることはいうまでもありません。花粉症の症状が起こりはじめたごく初期では、鼻粘膜にまだ炎症が進んでおらず、この時期に治療を開始すると粘膜の炎症の進行を止め、早く正常化させることができるため、花粉症の重症化を防ぐことができます。

舌下免疫療法:通常の医療で行われていた免疫療法、いわゆる減感作療法は皮膚への注射により原因の抗原エキスを体内へ入れます。この舌下免疫療法は口の中で舌の下、舌下に抗原エキスを入れて、花粉症の症状を根本から少なくさせようとする根本的治療法です。当院でも施行が可能となりました(シダキュア、シダトレン)。またダニアレルギーに対する舌下免疫療法も行っております(ミティキュア、アシテア)。詳しくはご相談ください。

予後

現在、完治の可能な治療法は減感作療法(抗原特異的免疫療法と正式には言われます。)だけです。しかし、現在の治療法では、完治する率は決して高くありませんし、また副作用の問題や治療に長い期間がかかるため、現在も新しい減感作療法の研究が進められています。

費用

3割負担の方の場合は、初診で検査を行うには6000円がかかります。さらに次の診療からは、毎回再診料などがあり、薬剤(経口薬、点鼻薬、点眼薬など)を2ヶ月使用し、それでワンシーズン6000円程度になります。つまり、その方の重症度により異なりますが、初めての年ではトータルで12000円から17000円程度、次の年からは(再診扱いで追加検査を行わない場合)7000円から12000円程度の負担になります。詳しくはお問い合わせください。

 

花粉症QA

Q1. 花粉症になりやすい人はいるのですか。

花粉症以外のアレルギー疾患をもっている方や、家族の方が何らかのアレルギー疾患を持っている人は、それのない人に比べて、花粉症になりやすいと考えられています。

Q2. 今は花粉症ではないのですが、今後花粉症にならないためにはどうすればよいのですか。

大量の花粉に出会うと、体が花粉に対する抗体を産生する可能性が高くなります。スギに対する抗体をたくさん産生すると、何らかのきっかけでスギ花粉症を発症しやすくなります。また、これまで軽症で花粉症であることに気がつかなかった方も、花粉を鼻からたくさん吸い込んだり、目に入ったりすると、花粉症の症状が強くなります。花粉になるべく接しないことは重要なことです。

Q3. マスクは効果がありますか。

マスクは、花粉の飛散の多いときには吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし、鼻の症状を少なくさせる効果が期待されています。また、花粉症でない方も、花粉を吸い込む量を少なくすることで、新たに花粉症になる可能性を低くすることが期待されていますが、風が強いと鼻の中に入る花粉はマスクをしていても増え、効果は減弱するといった報告もあります。マスクをしていても完全防備にはならず、過大に信用は禁物です。

Q4. うがいは効果がありますか。いつ行うのがいいですか。

鼻の粘膜には線毛があり、粘膜の上の異物を輸送します。うがいは、のどに流れた花粉を除去するのに効果があります。外出から帰ってきたら、かぜの予防にもなりますので、うがいをしましょう。

Q5. 洗顔は効果がありますか。いつ行うのがいいですか。

花粉が人間に付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。外出から帰ってきたら洗顔して花粉を落とすと良いでしょう。

Q6. 洋服の服地はどのようなものがいいのですか。

洋服に花粉がついてしまうので、花粉飛散している時の外出時には毛織物による上着やコートは避けたほうが良いでしょう。表面がすべすべした綿かポリエステルなどの化学繊維のものには花粉が付着しにくく、付着した花粉を吸い込む量を減らすことが期待されます。

Q7. めがねは効果がありますか。

メガネは花粉の飛散の多いときには、目に入る花粉を2分の1から3分の1まで減らすことができますが、眼の症状をどの程度弱くすることができるのかは明らかではありません。

Q8. その他予防方法を教えてください。

花粉が人間に付着しやすいのは表面に出ている頭と顔です。頭の花粉は、帽子などで避けることが可能です。
一般的な注意事項として、睡眠を良くとること、生活習慣を保つことは、正常な免疫機能を保つために重要です。風邪をひかないこと、お酒の飲みすぎに気をつけること、タバコを控えることも鼻の粘膜を正常に保つために重要です。

Q9. 花粉症の人がかかりやすい病気はありますか。

花粉症はアレルギーの病気なので、同じアレルギーである喘息や通年性のアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎などになりやすいと考えられています。

Q10. 花粉の季節でなくても花粉症の症状がでることがありますか。

スギ・ヒノキ花粉症では2月から5月以外に10月から11月にごく少量の飛散があって軽い症状が出ることがあります。イネ科の花粉症は6月から8月、ブタクサの花粉症では8月から10月に症状が出ますが、そのほかの季節で鼻の症状が出るときには花粉症以外の鼻炎も考えられます。

Q11. 花粉症に効くといわれているものの効果を教えてください。

花粉症関連グッズはマスク、メガネのほか様々なものが出されていますが、実際に花粉症の症状を良くするというデータは、充分にないのが現状です。
お茶: 甜茶ポリフェノールはアレルギーで生じるヒスタミンの作用を和らげる効果があると言われますが、実際の患者さんでの効果は不明です。
ヨーグルト: 腸内細菌を変化させると体内の環境がアレルギーを抑えるようになると考えられています。しかし、ヨーグルトを毎日食べるブルガリアの人でもアレルギーの病気はありますので、花粉症を完全に治すことは難しいかもしれませんし、実際の効果の程度は不明です。
鼻の穴に塗るクリーム: 薬効成分は入っていませんので、花粉症自体を治す効果はありません。しかし、花粉が粘膜にくっつく前に、クリームがブロックする効果はあると考えられます。ただ、効果は十分に明らかになっているわけではありません。
衣類の静電気防止スプレー: 毛織物以外の衣類にはほとんど花粉がつきませんが、例えば毛皮のコートなどにスプレーをすることは効果が期待されます。

 

詳しくは厚生労働省のパンフレット「的確な花粉症の治療のために」をご覧ください。

参考文献:

1.「平成22年度花粉症対策 花粉症Q&A集」(厚生労働省)(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/ippan-qa.html)を一部引用、加工して作成

2.「的確な花粉症の治療のために 第2版」(厚生労働省) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000077514.pdfを一部引用、加工して作成