高尿酸血症・痛風

はじめに

健康診断などで血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。高尿酸血症は30歳~40歳代の男性に多くみられ、成人男性の約20%にみられます(女性は女性ホルモンの影響で尿酸値が上がりにくいことから全年齢の5%未満です)。通常は無症状なことから、放置している方も多いですが、尿酸値が高い状態が続くと、ある日突然、足の親指が腫れて、激痛を来します。これがいわゆる痛風発作で、平成25年の国民生活基礎調査では100万人の男性がかかっていると推定されています。しかし高尿酸血症の怖さは痛風発作だけではありません。長い間放置していると、尿酸が全身に蓄積されて、腎障害(慢性腎臓病の項参照)や尿路結石などの合併症も引き起こしてしまいます。そのため早期発見早期治療が重要です。健診などで高尿酸血症、腎障害などを指摘された方は、症状がなくても一度当院へご相談ください。

原因

そもそも尿酸とは、体の細胞内に存在するプリン体から産生されます。プリン体は食品にも含まれていますが、食品から摂取するプリン体は全体の20%程度で、残りは体内でつくられます。プリン体からつくられた尿酸は、体内で一定の量がためられています(尿酸プールという)が、余分な尿酸は尿中などに排泄されます。この尿酸の産生と排泄のバランスが崩れてしまうと、高尿酸血症となります。

多くの場合は、遺伝的素因と、過食や飲酒などの外因が合わさって発症しますが、血液の病気や、癌、腎臓病、薬剤の影響などでも起こります。

診断

先にも述べた通り、血清尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されます。数値は変動することから、健康診断で指摘された方は、当院でも再検査を行います。また高尿酸血症の患者さんは、腎障害や高血圧、肥満、糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などを合併する頻度が多いことから、これらの疾患のスクリーニング検査も行います。

治療

高尿酸血症の治療:基本的にはガイドラインに沿って治療を行います。最も重要なのは生活習慣の改善です。食事に関しては、摂取エネルギーを適正に保ち、体重をコントロールします。またプリン体を多く含む食品(以下)は控えるようにします。尿酸値が高いと尿が酸性となり、尿路結石ができやすくなります。そのため野菜、海藻などのアルカリ性食品を多くとるように心がけます。またお酒、特にビールにプリン体が多いのは有名ですが、控えるように指導します。尿酸は尿から排泄されるため、水分を多くとることで排泄が促されます。適度な運動も重要ですが、筋トレなどの激しい運動は逆効果です。

プリン体が多い食品:レバー、牛ヒレ肉、豚肉、カツオ、エビ、イワシ干物、アジ干物など

しかしながら生活習慣の改善を行っても尿酸値が改善しない(以下の2,3)、もしく1に該当する方は薬物療法の適応となります。尿酸生成抑制薬、尿酸排泄促進薬を処方し、尿酸値6.0mg/dl以下にコントロールします。

1. 痛風発作を起こしたことがある、または痛風結節がある方

2. 尿酸値が8.0mg/dl以上で、合併症(腎障害、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなど)のある方

3. 尿酸値が9.0mg/dl以上の方

発作時の治療:発作の前兆期にはコルヒチンを内服します。発作が起こってしまった場合は、まずは患部を心臓より高くし、安静、冷却します。また非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などを内服します。発作は1~2週間続くことがありますが、発作が起こっている間は原則尿酸値を下げる薬は開始しません。発作がおさまってから開始します。ただし、すでに尿酸値を下げる薬を内服されている方で、発作が起きてしまった場合は、そのまま飲み続けてください。