腹部膨満

重篤な疾患が潜んでいることもあり、原因を特定することが重要です。

はじめに

腹部膨満を主訴に消化器科を受診される患者さんは比較的多いですが、重篤な疾患が潜んでいることもあり注意が必要です。腹部膨満は腹部全体の膨満か、局所的な膨満かに分けることができます。それぞれ以下のように鑑別されます。

腹部全体の膨満

1.鼓腸:いわゆるガスがたまっている状態で、代表的なものに腸閉塞、便秘、消化管穿孔などが挙げられます。発酵性食品の摂取や、糖尿病の薬の一つであるαグルコシダーゼ阻害薬でも見られます。

2.腹水:いわゆる腹腔内に水が溜まっている状態です。代表的なものに肝硬変、心不全、低蛋白血症、低栄養状態、腹膜炎、悪性腫瘍などが挙げられます。

その他、妊娠や肥満、巨大な腹部腫瘤でも腹部全体が膨満します。

局所的な膨満:代表的なものに肝腫大(癌や肝炎など)、胆嚢腫大、胃癌、膵癌、脾腫、腹部大動脈瘤、臍ヘルニア、妊娠、子宮筋腫などが挙げられます。

診断

当院では問診、身体診察を行った後、腹部超音波検査を行います。身体診察にて原因が、ガスなのか、腹水なのか、腫瘤なのかおおよその検討がつきます。また臍部に拍動を伴う腫瘤を触れれば、腹部大動脈瘤が疑われます。必要に応じて、妊娠反応、尿検査、採血検査、レントゲン検査、CT検査(提携医療機関にて)などを行います。

治療

原因に応じた治療が選択されます。心不全や肝硬変では食事指導、利尿剤などの薬物療法、腹水ドレナージを考慮します。便秘が原因であれば、排便コントロールを行います。急激な発症、バイタルサインの異常を伴うもの、腹痛や発熱を伴うもの、腸閉塞や癌が疑われる場合など、状況に応じて提携医療機関へ速やかにご紹介させていただく場合もあります。