急性肝炎

急性肝炎とは

急性肝炎とはウイルス、薬物、自己免疫、アルコール摂取などで引き起こされる、急性の肝細胞障害です。AST、ALTといった肝逸脱酵素の上昇を持って診断しますが、特に診断基準はありません。典型的な症状として、倦怠感、黄疸発熱、食欲不振、嘔気、肝腫大などを認めますが、特異的な症状はありません。軽度のものでは自覚症状もなく自然に軽快することがほとんどですが、約1%で劇症化し死亡する例もあり注意が必要です。気になる症状がおありの方、健康診断で肝機能異常を指摘された方は、当院へご相談ください。

成因

①肝炎ウイルス

A型肝炎ウイルス(HAV):貝類の生食、東南アジアなどの不衛生な地域への旅行で経口感染

B型肝炎ウイルス(HBV):性交渉によるものが最多、輸血、医療事故など

C型肝炎ウイルス(HCV):輸血、刺青、医療事故など

E型肝炎ウイルス(HEV):豚レバー、猪肉、鹿肉の生食

このうちA型肝炎ウイルスが最多、次にB型肝炎ウイルスが多くなっています。

②肝炎ウイルス以外のウイルス:EBウイルス(伝染性単核球症)、サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルスなど

③アルコール性肝障害

④薬剤性肝障害:アセトアミノフェン、抗結核薬、抗生物質、漢方薬、健康食品、サプリメントなど

⑤自己免疫性肝炎(AIH)

詳しくはそれぞれの疾患のページをご参照ください。

診断

肝炎は特異的な症状がなく、症状も軽微なことが多いため、ほかの疾患を疑いたまたま行った採血検査や健康診断で診断されることが多くなります。肝炎が疑われる場合には、まず問診が重要です。症状の出現した時期、生の肉などの食物摂取歴、海外渡航歴、性交渉、麻薬、入れ墨、針治療の既往、手術歴や輸血歴、過去の肝炎の既往、家族歴、飲酒歴、服薬歴を詳細に聴取します。この段階でおおよその検討がつく場合もあります。その後詳しい生化学検査、血液学的検査、ウイルス学的検査、腹部超音波検査を行います。また重症度の評価も行います。

成因診断のための検査

A型肝炎:IgM-HA抗体

B型肝炎:IgM-HBc抗体(B型慢性肝炎の場合はHBe抗原、HBe抗体、HBV-DNA量も測定します)

C型肝炎:HCV-RNA

E型肝炎:HEV-RNA、IgM-HEV抗体

EBV:VCA-IgM抗体(VCA-IgG抗体、EBNA抗体)

CMV:CMV-IgM抗体

AIH:IgG、抗核抗体

薬剤性:リンパ球刺激試験(DLST)

詳しくはそれぞれの疾患のページをご参照ください。

治療

軽症であれば特別な治療は要しませんが、高度の肝障害、黄疸例では入院・安静にて経過観察します。原因に応じてステロイド、抗ウイルス薬などを投与します。アルコール性では禁酒、薬剤性ではすべての内服薬を中止します。劇症化した場合は、高度医療機関にて血漿交換、肝移植などの専門治療が必要となります。

感染症法による取扱い:A型肝炎」、「E型肝炎」は全数報告対象(4類感染症)であり、診断した医師は直ちに届け出なければなりません。B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎は「ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)」に含まれ、全数報告対象(5類感染症)であり、診断した医師は7日以内に届け出なければなりません。

当院は消化器内科専門医、埼玉県肝炎医療研修会受講済み医師が診療にあたっています。肝炎について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。