脂質異常症

お知らせ

この度、超悪玉コレステロールと呼ばれる、sd LDLコレステロール(スモールデンスLDLコレステロール)の計測が可能となりました。LDLコレステロールよりも直径が小さいため、血管の内壁に入り込み、動脈硬化を引き起こします。検査は保険適応外のため3,000円(税込3,300円)となります。詳しくはこちら>(pdfファイル)

はじめに

脂質異常症とは、血液中の脂質のうち、LDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセリド:TG)のいずれかが異常値を示す病態を指します。健康診断などで、「コレステロールが高い」と指摘される方は、LDLコレステロールのことを指しています。これら脂質異常症は高血圧や糖尿病などと同様、動脈硬化を進行させる危険因子の一つであり、将来的に狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクを高めます(下図)。初期には自覚症状はありませんので、早期に発見し、生活習慣の改善や薬物療法で、適正な値を保つことが重要です。

分類

主な原発性脂質異常症

家族性高コレステロール血症(FH)、家族性複合型高脂血症(FCHL)、家族性III型高脂血症、原発性高カイロミクロン血症、シストステロール血症、脳腱黄色腫症、タンジール病

主な続発性脂質異常症

高LDLコレステロール血症:甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、糖尿病、原発性胆汁性胆管炎(PBC)、閉塞性黄疸、クッシング症候群、薬剤など

高TG血症:肥満、飲酒、糖尿病、クッシング症候群など

症状

脂質異常症自体の症状はありません。動脈硬化が進行し血流障害を引き起こすと、場所に応じた症状が出現します。狭心症心筋梗塞では突然の胸痛が起こります。脳梗塞では突然の片麻痺やしびれ、ろれつ障害などを呈します。脂質が各臓器に沈着すると、例えば眼瞼やアキレス腱の黄色腫などが起こります。また著明なTGの上昇で、急性膵炎の発症が高まります。

診断・検査

空腹時(10時間以上の絶食)に採血を行い以下のように診断します。LDLコレステロールはFriedewald式(TC-HDL-C -TG/5)または直接法で計算します。

LDLコレステロール 140mg/dl以上:高LDLコレステロール血症

HDLコレステロール 40mg/dl未満:低HDLコレステロール血症

トリグリセリド(TG)150mg/dl以上:高トリグリセリド血症

脂質異常症と診断された場合、当院ではまず既往歴、家族歴、生活習慣についての問診、体重測定、血圧測定を行います。また続発性の脂質異常症を除外するために、甲状腺ホルモンなどの採血も行います。糖尿病や腎障害、肝障害の有無なども検査します。また実際の動脈硬化を調べるために、心電図検査、頸動脈エコー検査、腹部エコー検査、心エコー検査、頭部MRI検査(提携医療機関にて)を行う場合があります。

治療

ガイドライン沿ってそれぞれの患者様の将来的な冠動脈疾患の発症リスクを予測し、脂質管理目標値を設定します。低リスクの方は、LDLコレステロール<160mg/dl、中リスクの方は<140mg/dl、高リスクの方は<120mg/dlと設定します。冠動脈疾患の既往のある方は、<100mg/dlと厳格にコントロールします。TGは一律に150mg/dl未満を目指します。

生活習慣改善

脂質異常症の多くは生活習慣病の一つであり、生活習慣の改善がなにより重要です。禁煙、禁酒、適正体重の維持、食事療法、運動療法を行います。生活習慣の改善を行うことで、薬を飲まなくても数値が正常化することをしばしば経験します。また肥満の方は減量するだけでコレステロール値が正常化するばかりか、高血圧や糖尿病、脂肪肝といった他の生活習慣病も同時に改善します。

薬物療法

原発性の脂質異常症や、生活習慣改善を行っても効果が見られない方が薬物療法の適応となります。高LDLコレステロール血症の患者様にはまずスタチン系の薬剤を用います。高TG血症の患者様には、フィブラート系薬剤が第一選択となります。必要に応じてエゼチミブ、PCSK9阻害薬、EPA製剤を併用します。