気管支喘息

喘息は死に至ることもある疾患です。症状がないときも、治療を自己中断しないことが重要です。

気管支喘息とは

気管支喘息とは気管支に慢性の炎症、狭窄が起こることで、呼吸困難を来す疾患です(下図)。古代ギリシャ、ヒポクラテスの時代からすでに記載があります。発作性の喘鳴(ゼーゼーヒューヒュー)、呼吸困難などの症状が特徴であり、場合によっては死につながる程の重い発作を起こす可能性があるため油断の出来ない疾患です。

症状

発作がないときは無症状ですが、喘息患者さんの気道では慢性的に炎症が起こっており気道が過敏になっています。風邪、ほこり、天候、疲労、ストレス、喫煙、ペットの接触など、何らかのきっかけがあれば症状が出現し、発作が起こってしまいます。発作の初期症状として、のどのイガイガ、咳、痰が出現し、徐々に増悪します。ぜーぜー、ヒューヒューという、呼気時の喘鳴が出現し、呼吸が困難となります。小発作では苦しいが横になれますが、中発作では苦しくて横になることができません。歩行も困難となります。大発作となると、苦しくて動くことができず、歩行不能、会話も困難となります。さらに悪化すると、まったく会話もできなくなり、意識障害、失禁、呼吸も減弱し最終的には呼吸停止し死に至ります。

診断

発作中に来院されれば、喘息の診断は比較的容易です。しかし非発作時や他の呼吸器疾患、とくに慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併する場合には、診断が困難なこともあります。  また喘鳴や咳など、気管支喘息と症状が似ている疾患も多数あることから、鑑別診断も重要です。当院では、問診や身体診察に加えて、採血検査、アレルギー検査、胸部レントゲン検査、心電図検査などを行い、確定診断に努めています。

治療

喘息は、発作につながる可逆性の気道閉塞と気道過敏性とともに慢性の気道炎症とその結果引き起こされる気道傷害から成り立つ疾患です。したがって、治療する場合には、発作あるいは喘息症状だけではなく、背景にある気道炎症も治療することが発作を起こさないことにつながります。当院ではガイドラインに沿って、患者毎に喘息の重症度を判定し、症状に対する治療と炎症を抑え症状を予防する治療(長期管理)の両面から、適切な薬物治療を行います。 症状の治療には即効性の気管支拡張薬、長期管理としては、吸入ステロイド薬を基本薬として継続し、必要に応じて他の薬剤を併用して無症状の状態を維持することを目標とします。患者さんには、症状がないときにも薬剤の服用を遵守し、喘息の原因への曝露を回避するよう指導します。良い生活環境にはフローリング、週3回以上の掃除、寝具の衛生管理が重要とされています。

発作への対応

長期管理を実行していても、発作が出現することもあり、発作に対する適切な対応も長期管理とともに非常に重要です。とくに喘息死をゼロにするためには、 長期管理による予防効果だけではなく、死亡の直接の原因である発作に対して、 適切に対応することが必須でです。 発作は、時と場所を選ばず出現するため、患者さん自身での対応を指導することが必要です。とくに医療機関を受診しなければならないと判断する基準を明らかにして指導することが重要です。

受診の基準:苦しくても横になれれば軽度の発作で、医師の処方した吸入β2刺激薬の吸入あ るいは経口の発作止めを頓服して下さい。目安として、吸入は1時間で 15〜20 分 毎に動悸を感じない限り継続、経口薬は 30 分後に1回追加可能です。それでも収 まらないときや明らかに悪化するときは1時間にこだわらず、受診してください。また苦しくて横になれない中等度や話が困難な高度の発作では、た だちに気管支拡張薬を服用して受診して下さい。中等度でも気管内挿管歴や入院 歴がある場合、高用量吸入ステロイド薬や経口ステロイド薬を継続投与されている場合には、家庭で経口ステロイド薬を医師の指示に従い内服し、直ぐに受診して下さい。

ぜん息カード:緊急受診の際に有用です。カードに含まれる内容としては、処方されている治療薬、推奨される発作時の対応に加えて、喘息の発症時期、治療歴、入院歴、アスピリン喘息の有無、薬剤アレルギーの有無などを記載します。

参考文献:

「喘息死ゼロ作戦の実行に関する指針 」(厚生労働省)(www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jititai05.pdf)から一部引用